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発行 雷鳥社
価格 ¥2200(本体¥2000+税)
仕様 A5判変形、上製、1C、p144、別丁・袋とじ付
ISBN 978-4-8441-3777-1
季節を脱いで ふたりは潜る
幾重にも着込んできた 季節をすべて脱ぎ捨てて、
今では遠く無くしたものに、水の中で手を伸ばす——。
(読者特典:電話朗読室付)
『かのひと 超訳 世界恋愛詩集』以来、3年ぶりとなる菅原敏の新詩集は、
移ろいゆく暮らしを、やさしく抱き寄せ、綴った季節の詩。
燃やすとレモンの香る詩集や、毎夜一編の詩を街に注ぐラジオ番組など数々の試みをおこなってきた菅原敏が、今作では、遠い日々の断片を拾い集めてぺージに挟みこむように、季節の情緒を12ヶ月の詩に写しました。
カバーを“脱ぐ”とあらわれる肌のような表紙や、
帯につくられた“小さな海” など、こだわり抜いた造本。
さらに朗読などの公演が叶わない今、一篇の詩を電話でお届けする
読者特典〔電話朗読室〕の電話番号を本書の中に隠しました。
雑誌『BRUTUS』での連載を中心に、
近年の代表作含む、12ヶ月×4編〔全48編〕を収録。
>4月
アスファルト上の片手袋を拾い上げると爆発する冬が終わって、動物たちが巣穴で目覚めるころ。やさしい光のなかでも私たちは少しだけ狂ってる必要があった。ほぼ毎日彼女は家にいるので、通帳なのか未来の姿なのか、私は何かを見ないようにと驚くほどに毎日眠る。オムレツリンゴヨーグルト、朝飯を食べ終わると午後三時。彼女の肌も荒れてきた。幸せな暮らしと正しい暮らし。睡眠薬とビタミン剤。それぞれの違いを交換したら洗濯機、私は彼女の下着を洗う。(暮らし)
>7月
肌と肌の輪郭が
あいまいに消えされば
国境を越えて
なめらかな山の稜線
カーテンの隙間から
初夏の日差しが
背中を打ち抜いて
ちいさな午後の死
ラジオのニュース
遭難者2名
同じコップで水を飲み
眠りに落ちる前に聞いた
ひとつのからだで
いきるための理由
(冷たい水)
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