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フォロンを追いかけて Book 2
¥2,200
発行 ブルーシープ 2024年7月19日発売 定価:税込2,200円(本体2,000円) 絵:ジャン=ミッシェル・フォロン 写真:木村和平 詩:大崎清夏 翻訳:エレオノール・マムディアン アートディレクション&デザイン:須山悠里 編集:柴原聡子 印刷・製本:株式会社アイワード 仕様:A5変型、136ページ、並製 ISBN:978-4-908356-58-2 フォロンを追いかけて撮り下ろした写真と気配を感じる言葉で、フォロンを「感じる」本 ジャン=ミッシェル・フォロン(1934-2005)は、ユーモラスな線描、美しい色彩とファンタジックな世界観、そして人類に警鐘を鳴らす強いメッセージを描いたベルギー人のアーティストです。1970年代以降世界的に活躍し、日本でも1980年代と90年代に大規模な巡回展が開かれ、人々の心をつかみました。今回約30年ぶりに展覧会が開かれるのを機に、フォロンのファン、フォロンを知らない新たな鑑賞者にむけた本を2冊出版します。フォロンが生み出した多彩で詩情的な作品群を前に、すっと心を開く。そしてフォロンを過去にではなく、未来に感じる。そんなきっかけになるような、フォロンを追いかける二つの旅のような2冊の本です。 『フォロンを追いかけて Book2』 2冊目はフォロンを「感じる」旅。農家を改築したアトリエに差し込む柔らかな光、母屋の壁に開けられた大きな窓から広がる田園。フォロンが愛したパリ近郊の小さな農村ビュルシーの家にはじまり、世界への足掛かりをつかんだパリからブリュッセルへ。地下鉄駅の巨大な壁画、郊外にあるラ・ユルプの美しい森と湖、そして敷地内に設立されたフォロン財団に飾られた絵や彫刻。フォロンのいた場所を写真家の木村和平がたどりフィルムに収めました。ペンから筆、平面から立体へ広がるフォロンの多彩な作品と木村の写真が本を織り成します。旅の終章は、大崎清夏の詩です。作品と写真による視覚から飛翔し、フォロンの気配を言葉から感じる試みです。フォロンを追いかける旅は、どこまでも続きます。
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抜け出しても抜け出しても変なパーティー|水野しず
¥2,420
SOLD OUT
発行 左右社 定価 2,420 円(税込) 刊行日 2024年10月31日 判型/ページ数 四六判変形 上製 160ページ ISBN 978-4-86528-441-6 Cコード C0092 装幀・装画 横山裕一/装画 名久井直子/装幀 POP思想家・水野しずの濃縮エキスの詰まった傑作歌集が、ついに誕生! 目の前の現実を切り裂き、その返り血を浴びながら進む覇気に痺れました。ーー穂村弘 この世界の信用できなさに敏感すぎる水野しずさんの、やや信じられる何かに、一瞬でいいからなってみたい。ーー枡野浩一 〈収録短歌より〉 職業はピエロをやっておりますがここに書くなら無職にします 「だし巻き」は「卵」が無視をされているそういう事はわりとよくある 神様を信じますか? と聞かれたがもっといる前提で言ってきていい 泥棒が盗んだアロマディフューザーそれでも人は癒されるのか やくしまるえつこになりたい人がいる なってごらんとえつこは思う 敗北し惨殺されて雨風に打たれたものしかもう信じない オリジナルサラダといって出てきたがどこもかしこも知っている味 「ごほうび」と売ってる側が言ってくる当方の金を得る分際で 「芸術」を死に物狂いでやっている。回転寿司を一つも取らずに ここまでは宮崎駿の関係者ここから先は一般の方
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引き出しに夕方をしまっておいた|ハン・ガン
¥2,420
発行 クオン 翻訳:きむ ふな、斎藤真理子 編集:アサノタカオ 装幀:松岡里美(gocoro) 刊行:2022年6月30日 頁数:192ページ装 版型:四六変形判、仮フランス装 価格:2,200円+税 978-4-910214-28-3 C0098 回復に導く詩の言葉 ハン・ガンが20年余りにわたり書き続けてきた60篇を収めた詩集『引き出しに夕方をしまっておいた』を、著者の小説を手掛けてきた翻訳家きむ ふなと斎藤真理子の共訳により刊行致します。 巻末に収録した翻訳家対談では、韓国における詩の受容や詩人としてのハン・ガンなど、広く深みのある話が繰り広げられており読者を韓国の詩の世界へ誘う格好のガイドとなっています。 ハン・ガンの小説は美しく、同時に力がある。繊細さだけではなく強さがある。 その元にあるものがこの詩にあらわれている。 ――斎藤真理子 ハン・ガンにとって詩は内密な自分自身の声に正直なもの。 詩を書くことで、心身のバランスや問いを直視し続ける力を回復していく。 ――きむ ふな
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とても小さな理解のための|向坂くじら
¥2,200
SOLD OUT
発行 百万年書房 四六変形判 縦130mm 横160mm 厚さ18mm 重さ 219g 232ページ 仮フランス装 価格 2,000円+税 ISBN978-4-910053-58-5 初版年月日 2024年10月30日 日々の息苦しさからの解放。 ここに綴られた詩は、あらゆる事象の境界を 溶かし、生まれたての眼で世界を見せてくれる。 又吉直樹(お笑い芸人) 幼さを内包しながら、少女は溶ける。 羽化した大人の身体。虫の眼で見つめる世界。 日常の美しさと痛みを描き出す、透明な言葉たち。 今日マチ子(漫画家) 「幸福な人間に詩は書けない」とある詩人は言ったが、わたしはそれを信じない。くじらさんは手を伸ばす。いま匂いや重みをもつきみ、おまえ、あなたへと。あなたの向こうの窓やその先へと。その道すがら、出会う誰かと互いに呼吸を渡し合って、生きて詩を書きつづける彼女のことを、わたしは誰よりも信じている。 堀静香(歌人、エッセイスト) 名著、復活。 向坂くじらデビュー詩集、増補・新装版。
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●サイン本予約 時の辞典|岡野大嗣
¥2,145
SOLD OUT
12月上旬お届け予定です。 店頭受け取りをご希望の方はお電話・メールにてご連絡ください。 発行 ライツ社 本体価格(税抜) ¥1,950 発行日 2024/12/6 頁数 392 サイズ(mm) 縦188 × 横128 × 厚さ20 判型 46 歌人・岡野大嗣、10周年記念ベスト作品集! 365日、その日その季節にぴったりの短歌を並べてみたら、大切な記憶のとびらを開いてくれる「時の辞典」ができました。 1月2日 404 not found 初夢のどこにあなたは隠れていたの 2月14日 会いたいなあ 高架の下の自販機で買ったココアがまだあったかい 3月27日 あとがきにかえて、みたいに咲いている桜 そういう気持ちの夜に 4月5日 散髪の帰りの道で会う風が風のなかではいちばん好きだ 5月18日 方言をほころびあっていくふたり五月の川を並び歩いて 6月13日 ワイパーを一番速いやつにして負けないくらいの歌をうたった 7月7日 またね、って下から読んだら違うのに同じみたいに振り返す手だ 8月1日 コンビニのやる気あふれてお祭りの夜にはみだすフランクフルト 9月14日 沿道のコスモスざかりに押し歩く自転車 長く生きてきたよな 10月24日 ひさしぶりに食べるとおいしいねと話すあなたはひさしぶりが同じひと 11月20日 誰だろう毛布をかけてくれたのは わからないからしあわせだった 12月28日 ファミレスは小さな足湯 近況をどこまでさかのぼって話そうか 今日の日付でも、誕生日でも、たまたま開いた日でも、お好きなページからお楽しみください。 1年に始まりのカレンダー代わりに、あるいは、大切な人への誕生日プレゼントにぴったりの本です。 【こだわりの仕様】 ・カバーデザインにある鍵のフチは、キラキラのホログラム箔加工です。 ・本文用紙は1ヶ月ごとに色が変わる12色の色紙になっています。季節感ある読書体験をお楽しみください。
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今日は思い出す日|yoyo
¥1,400
リトルプレス A6文庫判 モノクロ、カラー混合 128ページ 2022年4月から2023年3月までの日記をおさめた日記本です。本を読み、子どもと過ごしながら考えたこと。 A6文庫サイズ、モノクロカラー混合の全128ページ。日記をベースに散文と少々の写真、短歌、そして巻末に「ウェブ上に日記を書くこと」という雑記をおさめています。あのころの個人サイトを誌面に起こすつもりで作りました。 日記は1日1ページにおさめ、通しで読むというよりはそばに誰かがいてほしいときに好きなページをぱっと開けるようなつくりにしました。
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よくわからないけど、あきらかにすごい人|穂村弘
¥935
毎日文庫 サイズ 文庫判/ページ数 224p 商品コード 9784620210605 発売 2023/10 「その時、私は怖ろしいことに気がついた。もしかして、奇蹟のような作品を作ったあの人にもあの人にもあの人にも、会おうと思えば会えてしまうのか。信じられない」―谷川俊太郎、宇野亞喜良、横尾忠則、荒木経惟、萩尾望都、佐藤雅彦、高野文子、甲本ヒロト、吉田戦車ら「創作の神様」と人気歌人による、創作をめぐる奇蹟の対話、完全収録。 目次 谷川俊太郎 詩人―言葉の土壌に根を下ろす 宇野亞喜良 イラストレーター―謎と悦楽と 横尾忠則 美術家―インスピレーションの大海 荒木経惟 写真家―カメラの詩人 萩尾望都 漫画家―マンガの女神 佐藤雅彦 映像作家―「神様のものさし」を探す 高野文子 漫画家―創作と自意識 甲本ヒロト ミュージシャン―ロックンロールというなにか 吉田戦車 漫画家―不条理とまっとうさ 解説のような、あとがきのような、ふむふむ対談 名久井直子 ブックデザイナー―憧れってなんだろう 著者等紹介 穂村弘[ホムラヒロシ] 1962年、北海道生まれ。歌人。歌集『シンジケート』でデビュー。『短歌の友人』で第19回伊藤整文学賞、「楽しい一日」で第44回短歌研究賞、『鳥肌が』で第33回講談社エッセイ賞、『水中翼船炎上中』で第23回若山牧水賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) ※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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春原さんのリコーダー|東直子
¥770
SOLD OUT
ちくま文庫 定価770円(10%税込) ISBN 978-4-480-43620-7 Cコード 0192 整理番号 ひ-19-3 刊行日 2019/10/09 判型 文庫判 ページ数 224頁 人気歌人で、作家としても活躍している東直子のデビュー歌集。代表歌「廃村を告げる活字に桃の皮ふれればにじみゆくばかり 来て」ほか、シンプルな言葉ながら一筋縄ではいかない独特の世界観が広がる347首。小林恭二、穂村弘、高野公彦らによる単行本刊行時の栞文に、新たに花山周子による解説、川上弘美との対談も収録。
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地球の恋人たちの朝食|雪舟えま
¥3,300
発行 左右社 定価 3,300 円(税込) 刊行日 2024年09月27日 判型/ページ数 四六判 上製 464ページ ISBN 978-4-86528-431-7 Cコード C0095 タカノ綾/装画 ©AYA TAKANO/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved. 名久井直子/装幀 よろしくね あたしは まみっていうの 《あたしは地球の数倍重力の強い星からきた女だ 地球人の数倍重い夢に 耐えられるようにできているはず》 穂村弘歌集『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』の主人公「まみ」のモデルとしても知られる歌人・雪舟えまによる伝説の最初期作品集が、20年の時を経てついに書籍化! 日記・詩・小説などジャンルを縦横無尽に行き来するwebニッキ「地球の恋人たちの朝食」の2001年から2008年までに公開された作品群から217篇を厳選。巻末には穂村弘による解説「言葉の超常現象」を収録。 二十年後の今読み返しても、初読時とは違って心の準備があっても、やっぱり異次元に跳ばされる。 これはもう言葉の超常現象ではないか。そして、未来の誰かのための聖書。−−穂村弘(解説より) ○ 毎年 あたしのように何人かが地球を出てゆくけど だれもが地球から持ちだす品をきめられなくてたいへんだという 想いでの本 想いでのレコード 想いでのドレス 想いでのアルバム 想いでの宝石 想いでの人形 想いでの手紙 想いでの食べ物 想いでの 想いでの 想いでのうつくしいものたち 〈自分の背中の幅よりはみだしてはいけない〉決まりの 小さなリュックにつめこむ品を泣きながらえらぶとき あたしたちはこんなにも地球が可愛ゆいものだったと思い知る (「地球の恋人たちの朝食」より)
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旅の心を取り戻す|柊有花
¥2,090
SOLD OUT
発行 七月堂 著者・装画・挿絵 柊有花 発行日 2024年10月5日 138×148mm 88ページ このたび柊有花さんによる、「絵」と「言葉」の本を刊行いたします 明け渡してしまった 自分の心を取り戻すには 目的のない旅が必要だ ○ 「呼吸」 人が去ったあとの海は 清らかに 打ち上げられた星は 浜一面にまたたく しなやかに編まれた 太陽の光は 海の底を明るく 照らしている 水面はやわらかに逆立ち 一枚の葉を 浜へ運んでゆく 一艘の白い舟が 岸を目指し進み かもめは追いかけ飛んでゆく 白い半月のかなた 昼の まぼろしのように浮かび ひとり 夜を待っているのか 濃い青と ブルーグリーンのあいだ 海は 海はたえまなく 呼吸している ○ 【著者からのメッセージ】 絵と言葉の本を作りたいとずっと思っていました。わたしにとって絵は仕事でもあり、ライフワークでもあります。けれど言葉もまた欠かすことのできない大切なものです。絵と言葉は分かちがたくつねに影響しあっていて、それを自分らしい形で統合していきたいといつも考えてきました。けれど絵本や詩集など、自分の思うものを収めるにはすこし形が違うように思えて、自分が作りたいものはなんなのかさえわかりませんでした。作りたいと思うものを形にできないことは、わたしにとってとてもつらいことです。そのことが恥ずかしく、自分に対して怒りと悲しみを感じていました。 コロナ禍の内省の時間を経て、わたしがものを作ることへの意識はずいぶん変わったように思います。そのなかで2020年に作った画文集『花と言葉』に背中を押され、もっと遠くへ旅に出たいと思うようになっています。けれど同時に不安があります。家にいることに慣れてしまった自分はそんな旅へ出られるのかしら、と思うのです。 今回刊行する本が、そんな自分のなかの葛藤を打破するようなものになっているかはわかりません。けれど、自分の現在地をあらわしたものであることはまちがいないと確信しています。旅の途上の、悩み、怒り、悲しみ、進みたいと願う、未完成で等身大の自分です。 旅は楽しく面倒なもの。わたしたちにはかけがえのない日常があり、コントロールできない環境があり、いつでも旅に出られるわけではありません。けれど旅と日常のあわいに立って自分の心を眺める時間、それもまたひとつの旅なのだと思います。わたしが誰かの本を通じて自分の心をたしかめているように、この本も誰かにとってのちいさな旅への扉となることがあったら。そんな願いをこめながら、力を貸してくださるみなさまとこの本を届けられたらと思っています。
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透明ディライト|一方井亜稀
¥1,870
発行 七月堂 発行日 2024年10月4日 四六判 110ページ 前作『青色とホープ』より5年ぶりとなる新詩集。 窓越しにゆらめく景色に浮かんでみえる人や物の影。 そこにいるのはもう一人の自分なのかもしれない。 もう会えない人のことをゆっくりと思い出すひと時。 ふと立ち止まってみる。 【帯文より】 たったひとつの断片が強烈な印象をもたらす時、それは記憶ではなく、たったいま夢から覚めたような、世界の裂け目が現れる。
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推し短歌入門|榊原紘
¥1,980
発行 左右社 定価 1,980 円(税込) 刊行日 2023年10月20日 判型/ページ数 四六判 並製 272ページ ISBN 978-4-86528-400-3 Cコード C0092 重版情報 5 川谷デザイン(川谷泰久+趙葵花)/装丁、田沼朝/装画・挿絵 ⼀字のことで騒げる能⼒、対象への熱い思い、オタクは短歌に向いている! 「脚が5メートルある!」「顔がルーブル美術館(=美術品のように美しい)」などなど、オタ活においてはミームや誇張表現に頼ってしまい、語彙喪失状態になってしまいがち。 それでも、好きなものをもっと丁寧に、自分だけの言葉にしたい! そんなオタクたちの真摯な想いに応える、現役オタク歌人による短歌入門。
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第五インターナショナル|マヤコフスキー
¥1,047
マヤコフスキー叢書9 発行 土曜社 翻訳 小笠原豊樹 仕様 ペーパーバック判(172 × 112 × 6.4ミリ)80頁 番号 978-4-907511-29-6 初版 2016年7月14日 定価 952円+税 五百年後の芸術を描く 1922年秋。30歳の詩人は、3年越しの大作の冒頭をイズヴェスチヤ紙上に発表し、ベルリンへ発つ。やがてディアギレフの案内でパリに入り、ピカソ、レジェ、ストラヴィンスキーらと会う。全八部と構想されながら未完に終わった長篇詩の冒頭二部を、詩人・小笠原豊樹の最後の新訳でおくる。日本翻訳家協会特別賞。 表紙 「労働のかたわらに小銃もお忘れなく」(マヤコフスキー=文、レーベデフ=絵、1921年、ロスタの窓、サンクトペテルブルク) 何か珍しいことでも起こらぬ限り、雲を身にまとっていよう 三年越しの計画だった「第五インターナショナル」を書き始めた。ユートピアである。五百年後の芸術を描くつもりである マヤコフスキー(詩人) この詩の主人公マヤコフスキーは、リュドグス(人間鵞鳥)という生き物を発明する。ネジをキリキリと巻くと、リュドグスの頸は数千メートルも伸び、その伸びた頸を所々方々に向けて、傍観者たることは辛いなどと呟きつつ、世界各地の事象を眺める 小笠原豊樹(詩人・翻訳家) 著 者 略 歴 ヴラジーミル・マヤコフスキー Влади́мир Влади́мирович Маяко́вский ロシア未来派の詩人。1893年、グルジアのバグダジ村に生まれる。1906年、父親が急死し、母親・姉たちとモスクワへ引っ越す。非合法のロシア社会民主労働党に入党し逮捕3回、のべ11か月間の獄中で詩作を始める。10年釈放、モスクワの美術学校に入学。12年、上級生ダヴィド・ブルリュックらと未来派アンソロジー『社会の趣味を殴る』のマニフェストに参加。13年、戯曲『悲劇ヴラジーミル・マヤコフスキー』を自身の演出・主演で上演。14年、第一次世界大戦が勃発し、義勇兵に志願するも結局、ペトログラード陸軍自動車学校に徴用。戦中に長詩『ズボンをはいた雲』『背骨のフルート』『戦争と世界』『人間』を完成させる。17年の十月革命を熱狂的に支持し、内戦の戦況を伝えるプラカードを多数制作する。24年、レーニン死去をうけ、叙事詩『ヴラジーミル・イリイチ・レーニン』を捧ぐ。25年、世界一周の旅に出るも、パリのホテルで旅費を失い、北米を旅し帰国。スターリン政権に失望を深め、『南京虫』『風呂』で全体主義体制を諷刺する。30年4月14日、モスクワ市内の仕事部屋で謎の死を遂げる。翌日プラウダ紙が「これでいわゆる《一巻の終り》/愛のボートは粉々だ、くらしと正面衝突して」との「遺書」を掲載した。 訳 者 略 歴 小笠原 豊樹 〈おがさわら・とよき〉 詩人・翻訳家。1932年、北海道虻田郡東倶知安村ワッカタサップ番外地(現・京極町)に生まれる。東京外国語大学ロシア語学科在学中にマヤコフスキー作品と出会い、52年に『マヤコフスキー詩集』を上梓。56年、岩田宏の筆名で第一詩集『独裁』を発表。66年『岩田宏詩集』で歴程賞。71年に『マヤコフスキーの愛』、75年に短篇集『最前線』を発表。露・英・仏の3か国語を操り、『ジャック・プレヴェール詩集』、ナボコフ『四重奏・目』、エレンブルグ『トラストDE』、チェーホフ『かわいい女・犬を連れた奥さん』、ザミャーチン『われら』、カウリー『八十路から眺めれば』、スコリャーチン『きみの出番だ、同志モーゼル』など翻訳多数。2013年出版の『マヤコフスキー事件』で読売文学賞。14年12月、マヤコフスキーの長詩・戯曲の新訳を進めるなか永眠。享年82。
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宇宙人のためのせんりゅう入門|暮田真名
¥1,980
発行 左右社 定価 1,980 円(税込) 刊行日 2023年12月20日 判型/ページ数 四六判 並製 196ページ ISBN 978-4-86528-396-9 Cコード C0092 東海林たぬき/装画、北野亜弓(calamar)/装幀 Z世代の川柳人・暮田真名による初の〈現代川柳〉入門書。 ある日道で拾った宇宙人に「せんりゅう」と名付け、ふたりの奇妙な共同生活がはじまった――。現代川柳とは? どんな作品がある? どうやって発表する? 俳句とはどう違う? 川柳を作るとなにが起こる? 宇宙人との対話形式で、シュールなのになぜか胸が熱くなる、前代未聞の川柳入門。 「わたしは暮田真名。きみは今日から『せんりゅう』だ」 「せんりゅう?」 「そう、きみの名前はせんりゅうだよ」 (プロローグより)
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しずおか連詩 言葉の収穫祭
¥2,750
編著 野村喜和夫 発行 左右社 定価 2,750 円(税込) 刊行日 2023年12月10日 判型/ページ数 四六判 並製 280ページ ISBN 978-4-86528-391-4 Cコード C0092 松田行正+杉本聖士/装幀 詩人・大岡信の呼びかけで、現代詩でも俳句や短歌ような「座」による共作をやってみよう、とはじまった「しずおか連詩」。作家や歌人、作詞家など言葉を扱うさまざまな人に参加を呼びかけて、1999年以来続いてきた稀有で豊かで試みの成果をお届けします。 連詩という形式は昔ながらの伝統的な連歌・連句を継いでいるんだけど、 現代詩の世界では〈革命的に〉新しい形式なんです 谷川俊太郎 【連詩のルール】 しずおか連詩のルールは3行・5行のリズムで書き手がかわりながら、40篇をつづける、というシンプルなもの。 個人の詩集とも、アンソロジーとも異なる、眼の前の風景がどんどんと展開してゆくような、楽しく豊かな世界がひろがります。 【参加者:登場順】 井上輝夫/岡井隆/谷川俊太郎/平田俊子/大岡信/木坂涼/野村喜和夫/アーサー・ビナード/新井豊美/河津聖恵/田口犬男/杉本真維子/八木忠栄/山田隆昭/天沢退二郎/小池昌代/穂村弘/和合亮一/大岡亜紀/覚和歌子/田原/四元康祐/川口晴美/城戸朱理/管啓次郎/三角みづ紀/ジェフリー・アングルス/石田瑞穂/福間健二/文月悠光/木下弦二/東直子/岡本啓/町田康/暁方ミセイ/高貝弘也/高柳克弘/カニエ・ナハ/小島ケイタニーラブ/古川日出男/岡本啓/中本道代/長谷川櫂/三浦雅士/マーサ・ナカムラ/巻上公一/水沢なお/木下龍也/田中庸介/堀江敏幸 本書では捌き手が大岡信(2005〜2008)から野村喜和夫(2009〜)に替わり、若い詩人・歌人が積極的に参加するようになった2005年から2022年までの成果を収録しています。
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あおむけの踊り場であおむけ|椛沢知世
¥1,980
SOLD OUT
発行 書肆侃侃房 A5判変形、並製、128ページ 定価:本体1,800円+税 ISBN978-4-86385-628-8 C0092 装丁:成原亜美 装画:millitsuka 栞:大森静佳、染野太朗、永井祐、野口あや子、神野紗希 犬の骨を犬のようにしゃぶりたいと妹の骨にも思うだろう 第4回笹井宏之賞大賞受賞! 自分のからだのなかに未知の窓がいくつも開くような独特の感覚にうろたえる。大胆につかみだされる言葉の弾力と透きとおって不穏な世界に惹きつけられる。 ━━━━大森静佳(栞文より) ここにある歌たちの静かで、人けを離れて、体と身の回りをあらためて見直すような、狭い世界の可能性を追究するような、ひっそりと楽しいあり方に対して私はリアルな共感を覚えずにいられない。 ━━━━永井祐(栞文より) 【収録歌より】 手のひらを水面に重ね吸い付いてくる水 つかめばすり抜ける水 夜の川に映る集合住宅は洗いたての髪の毛のよう 恐竜って熱いんだっけ 夏の夜に麦茶含んで口きもちいい 銀杏の葉踏みしめられて白い道あたまのなかみたいで抱きたいな おなかすいてないのにおなかが鳴っている椿を思い浮かべて落とす 【著者プロフィール】 椛沢知世(かばさわ・ともよ) 1988年東京都生まれ。「塔」短歌会所属。2016年、作歌を始める。第4回笹井宏之賞大賞受賞。第30回歌壇賞次席。
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レテ/移動祝祭日|小俵鱚太
¥2,420
発行 書肆侃侃房 四六判変形、上製、216ページ 定価:本体2200円+税 ISBN 978-4-86385-631-8 C0092 装幀・装画 花山周子 栞 江戸雪 内山晶太 近江瞬 瀬戸夏子 レテ それはかんぺきな夏。それはまたthe very best みたいなやつだ 第2回笹井宏之賞長嶋有賞受賞! 新しい平熱 人は皆、四季の中に生きている。そのことを小俵さんはとても素直に受け止める。 花鳥風月を高らかに歌い上げるのでない、さりとて照れることもなく短歌に落とし込む。 ときに無駄や余白も厭わないその手つきは「平熱」「等身大」とでも言い表せられるけど、どこか「新しい平熱」とでも呼ばないと気が済まないものがここにはある。 ――長嶋有 【収録歌より】 夢だから告白できる汀にてあり得ぬほどの桜貝散る 善人じゃないと気づいて人生はようやく冬の薔薇に追いつく 海の日は移動祝祭日だから今年のハルは海の日生まれ それは別離の、別離のそれは川となる川を渡って家まで送る 【栞文より】 「じわじわと胸が熱くなり「ああ、これは祝祭だ」とおもった」(江戸雪) 「しずかな場所でたっぷりと時間をかけて読むのがふさわしい一冊」(内山晶太) 「ありありとした〝本当〟として響くに違いない」(近江瞬) 「淡く現実が滲んでくる」(瀬戸夏子) 【栞】 江戸雪「祝祭と別離と」 内山晶太「一首一首の丘」 近江瞬「〝本当〟の心、〝本当〟の世界」 瀬戸夏子「ふたつの川」 【著者プロフィール】 小俵鱚太(こたわら・きすた) 1974年12月生まれ。横浜市在住。 2018年8月に短歌と出会う。「短歌人」、「たんたん拍子」所属。 第2回笹井宏之賞長嶋有賞受賞。
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現代短歌パスポート3 おかえりはタックル号
¥1,100
発行 書肆侃侃房 四六判変形/並製/112ページ 定価:本体1,000円+税 ISBN978-4-86385-622-6 C0092 デザイン:藤田裕美 装画:楢崎萌々恵 大好評の書き下ろし新作短歌アンソロジー歌集、最新刊! 【収録作品】 服部真里子「すべての雪に新しい名を」 木下龍也「ひとりひとりぐらぐらしし」 橋爪志保「願いごと」 川村有史「植樹」 菅原百合絵「海を見る顔」 山川藍「ずっと家にいる 2023」 山下翔「ほんたうかなあ」 山階基「髪は煤ける」 上坂あゆ美「おしまいまで行く」 青松輝「別れの歌」
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踊る自由|大崎清夏
¥1,980
SOLD OUT
発行 左右社 定価 1,980 円(税込) 刊行日 2021年05月31日 判型/ページ数 四六判変形 並製 112ページ ISBN 978-4-86528-030-2 Cコード C0092 重版情報 2 装幀 大島依提亜 すぐそこにある、とはいえおいそれと立ち入れないゾーンの中に、この詩集はわたしをすうっと連れ込んでしまった。──岡田利規(チェルフィッチュ) 私も踊りたい/世界が踊っているのだから──。 『新しい住みか』から3年。『指差すことができない』(中原中也賞受賞)以来、1冊ごとに新しい世界を見せてくれる大崎清夏充実の新詩集をお送りします(装幀:大島依提亜) [略]「今年は集いは、集わないことになりました。」 あなたの対岸を わたしもひとりで歩いた 何年も暮らしたはずの場所にも まだ歩いたことのない道がある 四半世紀まえに足繁く通った 外国の雑貨やはがきを売る店は 育児支援の施設になっていた 砂利の駐車場を横切ってフェンスを跨ぐと センダングサの棘が手足にぺたぺたくっついた 見知らぬ親水公園に踏み入ると くさむらの分け目から 猫がこっちを見た [略] (「川沿いの道を歩く方法」より)
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黎明通信 [RAE-MAE SIGNALS]|川野芽生/高田怜央
¥1,650
リトルプレス 写真:川野芽生 編集:高田怜央 造本・デザイン:霧とリボン 発行日:2024年8月31日 価格:1,650円(税込) 限定 600部 3点セット仕様: <本体冊子>A6サイズ/中綴じ製本/32p/表紙:特色印刷/本文:二色刷り/帯付き <蛇腹小冊子>112mm×80mm/外五つ折/帯付き <蔵書票 >名刺サイズ/表面:特色印刷 海辺を散歩する小説家と、海辺に思いを馳せる詩人。 川野芽生と高田怜央が織りなす「海」の感触。 小説家・川野芽生と詩人・高田怜央が「海」をモチーフに書き下ろした詩と短編小説のコレクション。本作では、川野による初の連作詩、高田による初の短編小説も収録。さらに幻のコラボレーション作品「竜胆に就いて/On Rindoh」を巻末に掲載。本体冊子、蛇腹状の小冊子、短歌二首を印字した蔵書票の3点セット豪華仕様(造本・デザイン:霧とリボン)。 収録作品 【詩】 花飛沫 Many Oceans [海たち] (足)(跡) Blue [ブルー] (貝)(殻) APPARITION メニュー Crying Blue [クライン・ブルー] そこに 最後のように 【短編小説】 難破船 TWILIGHT THEORY 【対話詩】 竜胆に就いて/On Rindoh 初出:川野芽生 × 高田怜央『奇病庭園』『SAPERE ROMANTIKA』W刊行記念トーク「文学はつねにすでに翻訳である」特典ペーパー(本屋 B&B、2023年) 著者プロフィール 川野 芽生 Megumi Kawano 小説家・歌人・文学研究者。1991年神奈川県生まれ。2018年に連作「Lilith」で第29回歌壇賞、21年に歌集『Lilith』で第65回現代歌人協会賞受賞。24年に第170回芥川賞候補作『Blue』を刊行。他の著書に、短篇小説集『無垢なる花たちのためのユートピア』、掌篇小説集『月面文字翻刻一例』、長篇小説『奇病庭園』、エッセイ集『かわいいピンクの竜になる』、評論集『幻象録』、歌集『人形歌集 羽あるいは骨』『人形歌集II 骨ならびにボネ』がある。2024年7月、第二歌集『星の嵌め殺し』刊行。 高田 怜央 Leo Elizabeth Takada 詩人・翻訳者。1991年横浜生まれ、英国スコットランド育ち。上智大学文学部哲学科卒業。詩作に、第一詩集『SAPERE ROMANTIKA』、対話篇 『KYOTO REMAINS』(遠藤祐輔 共著)、「FUTURE AGENDA [未来の議題]」他 二篇(『ユリイカ 』)、「AFTER YOU [あなたの跡]」(読売新聞)など。主な翻訳に、ヴィム・ヴェンダース監督作『PERFECT DAYS』、ジュリアン・ビアバン・レヴィ監督作 CHANEL 2023/24 Cruise Collection『TOMORROW ELECTRIC』がある。NY派詩の翻訳を構想中。
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空き箱|著・福永星/写真・高田祐里
¥1,870
発行 左右社 定価 1,870 円(税込) 刊行日 2024年08月08日 判型/ページ数 四六判 上製 136ページ ISBN ISBN978-4-86528-413-3 Cコード C0092 装幀・装画 名久井直子 旅のあいまや、眠る前、何もしたくない時にも...... 心地よい「からっぽ」の時間に、そっと近くにいてくれる詩と写真。 ずっと昔から大事にしまっておいた宝箱のような、そんな詩集ができました。 開けるまで、そこには何も入っていない。 何をしまって、どこに置いたかも覚えていない。 大切なものを箱にしまっては忘れていくように、 いつか通りすぎたかもしれない景色を そっと訪れてみてください。 ーー「まえがき」より
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月のうた
¥2,200
SOLD OUT
発行 左右社 定価 2,200 円(税込) 刊行日 2024年08月30日 判型/ページ数 B6判変形 上製 136ページ ISBN 978-4-86528-427-0 Cコード C0092 重版情報 2 装幀・装画 装幀/脇田あすか 同時代の歌人100人がうたった 100首の〈月〉の短歌アンソロジー 月を見つけて月いいよねと君が言う ぼくはこっちだからじゃあまたね――永井祐 どこから開いても〈月〉がみつかる、はじめて短歌に触れるひとにむけた、とっておきの100首を集めました。 夜をみあげれば、ほそい月、まるい月、あかるい月、みえない月、おおきな月、とおい月、つめたい月、もえる月……うつろう月のもとに100人の歌人がうたった、わたしだけの月のうた。 巻末には、収録歌の著者紹介と出典リストを収録。 この一冊から、お気に入りの歌人を見つけてみてください。 【収録歌人一覧】 相川弘道/相田奈緒/我妻俊樹/左沢森/阿波野巧也/石井僚一/石川美南/伊藤紺/井上法子/今橋愛/魚村晋太郎/内山晶太/宇都宮敦/上澄眠/逢坂みずき/大滝和子/大森静佳/岡野大嗣/岡本真帆/荻原裕幸/椛沢知世/川島結佳子/川野芽生/川村有史/北山あさひ/絹川柊佳/木下龍也/鯨井可菜子/くどうれいん/黒瀬珂瀾/郡司和斗/小島なお/小島ゆかり/斉藤斎藤/佐クマサトシ/笹井宏之/佐佐木定綱/笹公人/佐藤弓生/柴田瞳/嶋稟太郎/鈴木加成太/鈴木晴香/鈴木美紀子/瀬口真司/平英之/竹中優子/谷川由里子/田村穂隆/俵万智/千種創一/寺井奈緒美/堂園昌彦/toron*/永井祐/中澤系/永田和宏/仲田有里/中村森/錦見映理子/野村日魚子/橋爪志保/長谷川麟/初谷むい/服部真里子/花山周子/濱松哲朗/早坂類/東直子/兵庫ユカ/平出奔/平岡直子/廣野翔一/藤本玲未/フラワーしげる/穂村弘/堀静香/本多真弓/前田康子/枡野浩一/松野志保/松村正直/丸山るい/水原紫苑/三田三郎/光森裕樹/虫武一俊/睦月都/村上きわみ/盛田志保子/安田茜/藪内亮輔/山川藍/山木礼子/山崎聡子/山階基/山田航/雪舟えま/吉岡太朗/脇川飛鳥 (あいうえお順・敬称略、全100名)
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光と私語|吉田恭大
¥2,300
いぬのせなか座叢書3 ※旧字体が表示されないため、作者氏名の表記を変更しております 発売日:2019年03月31日 第一刷 2019年07月05日 第二刷 2021年12月06日 第三刷 判型:163mm×111mm 280ページ 造本:コデックス装 本文二色刷り プラスチックカバー 栞=小冊子:荻原裕幸・堂園昌彦 装釘・本文レイアウト:山本浩貴+h ☆第54回造本装幀コンクール 読者賞受賞 ☆日本タイポグラフィ年鑑2020入選 私語と定型がゆるく織り上げるこの場所の、この出会いの奥行きに向けて。 いつか訪れる、百年生きたあとの葬儀のための第一歌集。 https://inunosenakaza.com/book/hikaritoshigo 装釘・本文レイアウトは、加藤治郎『Confusion』や岩倉文也『傾いた夜空の下で』等におけるデザインが話題の、いぬのせなか座主宰・山本浩貴+hが担当。 同封される栞には、荻原裕幸・堂園昌彦が寄稿。 平成の終わりに刊行される、真に新たな、一冊。 [推薦文(随時追加 到着順)] 駅や広場を暦や行事が群衆のように過ぎていく。たくさんの声。"私"すら群衆の声の一つとして稀釈される。そんな都市の中で"あなた"の声も薄まりながら、でも光のように確かに届く。これはきっと愛や永遠と呼ばれるものだ。 ――千種創一 吉田くんの歌は、通常注目されるはずの物事の因果から視線を逸らす、あるいは解像度を下げることによって、世界がもともと持っていた美しさを発見している。既存の文脈の残像が残っているからこそ、彼の短歌は無軌道でアヴァンギャルドなものではなく、どこか懐かしいような抒情性を湛えているのだと思う。 ――堂園昌彦 なにかを伝えようという役目を終えて、とうに元の姿を忘れかけながら、さまざまな声と雑じり合うようにして街のあちこちに響いている。あなたにもわたしにも宛てられてはいないけれど、喧騒の中を抜けて不思議と耳に届くささめきのような、かつて誰かの声だった歌。 ――山階基 相当に長い時間とややこしい思考といくつもの審査を経て並べられたに違いない言葉たちは、けれど自信に満ちた顔つきというよりも、どこか素気なく突っ立っているように思える。ひそやかにひとりの人に視線を送りながら、それでいてたくさんの人々に祝福されたがっているようでもある。いま詩歌は人間の生活の中でいかに機能するのか。驚くべき精度で展開されるその探求と実践がまぶしい。おめでとう。私たちはこの歌集を待っていた。 ――山田亮太 死んだ目で「寺山修司が好きなんです」って言う吉田くんと初めて会ったのはたしか夏目坂沿いの居酒屋だったように記憶している。その年の秋、大学の構内でゲリラパフォーマンスでもやろうと思い立ち、彼にも出てもらった。顔を白く塗り、軍服を着せて戦場っぽいことをやらせたらなんだか楽しそうにしていた。警備員さんにやんわり注意されたので謝って移動して、最後は文学部のすぐ脇にあった彼の部屋に行ってメイクを落とした。あれから十年くらい経って、でもこの十年くらい経ったなと思うような時間も、歌集の中には偽りなく含まれていた。 ――カゲヤマ気象台 都市の景色を思い出せない。その手がかりを探ってこの詩集をめくるとそこにあるのは言葉によって異化された街だ。そこでは人々が帽子や手を振り、画面には腐葉土の画像が並び、その片隅で誰かが水薬を噛みしめる。 ここに一冊の、言葉だけで組み上げられた世界がある。 韜晦しているようで誠実、達観しているふりをしながらもおセンチ。一読すれば吉田恭大の目で世界を読もうとしてしまうだろう。小説家は読まないほうがいい、かも。 ――水原涼 毎日を水平に横たわって過ごしていた時期に吉田君に呼び出され、デリバリーのチキンライスと1冊の本を渡された。やたら余白の多い歌集だった。チキンライスはその場で食べ、歌集は鞄に入れて1ヶ月ほどが過ぎた。例えば感傷は、傷というだけあってやがて癒えるのだろう。しかしあくまでも客観に留める吉田君の短歌はそれを許さず、だからこそ失われず、鞄の外で祈りや光みたいに遍在していた。ぽっかり広がる明るい余白のなかで、ずいぶんとのびのびさせてもらいました。 ――いつか床子 [著者] 吉田恭大(よしだ・やすひろ) 1989年鳥取生まれ。 歌人、ドラマトゥルク、舞台制作者。 塔短歌会所属。早稲田短歌会出身。 2017年4月より北赤羽歌会を運営。 Twitter: https://twitter.com/nanka_daya
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また猫と 猫の挽歌集|仁尾智
¥1,980
発行 雷鳥社 編集 安村正也(キャッツミャウブックス) 価格 ¥1980(本体¥1800+税)仕様 四六判変形 ISBN 978-4-8441-3804-4 猫であく穴は猫でも埋まらないけど猫だけが入れるかたち 多くの猫を愛し見送ってきた猫歌人・仁尾智と、 多くの“猫飼い”の声を聴いてきた猫本専門店オーナー キャッツミャウブックス店主・安村正也が贈る 猫の挽歌集 【著者・仁尾智 あとがき】 生きていくことの傍ら、猫を保護したり、保護した猫の里親さんを探したり、ときには子猫の一時預かりのボランティアをしたり、という活動をほそぼそとやってきた。もう四半世紀近くそんなことをしているので、その間、たくさんの猫を看取ってきてしまった。 猫を看取るときには、たくさん短歌がうまれる。気持ちが、これ以上になく動くからだと思う。そして、「短歌にする」という行為には、効能があると思っている。 大好きな猫が日に日に衰えていくときや、いなくなってしまったときの吐くような悲しみは、そのたびに短歌にしてきた。「短歌にしてきた」と書くと自発的行為のようだけれど、実際には、悲しみから身を守るように「短歌ができてしまう」というほうが正しい。 悲しみが短歌の形になると、少しだけ自分の中から外に出せたような気持ちになる。逃れがたい渦の中から、一瞬頭を上げて息つぎができる。短歌にする過程やできあがった短歌を目にすることで、自分に起こっている事態を客観視できるのだと思う。つまり、この本に収録されている短歌は「自分が楽になるために書いた短歌」なのだ。たくさんの猫を看取って、そのような短歌が歌集になるくらいたまってしまった。全部僕が僕のために書いた短歌なので、嘘のない歌集にはなっていると思う。 ……が、その反面、歌集としてまとめるに当たっては、大いに迷った。「そんな自分が救われるための作品で歌集を?」というわずかながらにあった歌人としての矜持とのせめぎあい。「猫を、しかも猫の『死』を利用していることにならないか」という罪悪感。「猫の挽歌集は、誰かの役に立つかも知れない」という気持ちと「役に立つってなに? 短歌はそんなものじゃないのでは?」という気持ち。また「我が家のように何匹もの猫を看取る悲しみと、例えば幼少期から二十年間一緒にいた一匹の猫を看取る悲しみが同じであるわけがない。悲しみなど共有できないのだから、何かをわかったような顔で本なんて出すべきではないのでは?」という葛藤。 そう、悲しみは共有できないのだ。それぞれが、まったく別の悲しみを抱いている。 ただ、「命」を前にしたときの右往左往や詮無い気持ちはみんな同じなのだ、とも思う。「もっと早く気づいてあげられていれば」とか「最後の瞬間に一緒にいてあげられなかった」とか、そうした自責の念や後悔も、多かれ少なかれみんなが抱いている。そして、そういう「同じ気持ち」のほうを共有できる機会は、意外と少ない。もしかして、余白の多い「短歌」という形であれば、その機会になり得るのではないか。 最終的には「誰かの役に立つ、というより、回り回って猫のためになるのでは?」という考えに至って、踏ん切りがついた。 この本を読んだ誰かが、少し前を向けて、また猫と暮らし始めてくれたりしたら、この本を作った甲斐どころか、僕が存在した甲斐があったとまで思える。 最後に。 僕の迷いをまるごと引き受けてこの本を世に出してくれたキャッツミャウブックスさんと雷鳥社さん、装丁を引き受けてくれた仁木順平さんには感謝しかない。本当にありがとうございました。 【編者・安村正也 あとがき】 「うちから何か本を出しませんか?」 たぶん世界初の猫歌人を名乗る仁尾智さんに、どこかに必ず猫が出てくる本だけを置いている猫本専門店オーナーの私が持ちかけたのは二〇二二年の暮れのこと。 「猫の挽歌集を出したいんですよね」 彼が即答した挽歌集とは、つまり猫の死を悼む短歌だけを集めた歌集ということだ。あまりポピュラーなテーマではないので、猫本専門店から発信すれば、読んでほしい層に届きやすいのではないかということらしい。 猫を飼う人はますます増えているが、通常は猫の寿命の方が短く、飼い主は愛猫に先立たれることになる。一方で、猫の長寿化に伴い、死別に関する猫本のテーマも、かつて主流だった【ペットロス】から、近年では【終活】【介護】【看取り】などに特化・分化してきている。とは言え、それらの書籍からは猫の一生における個々の場面でやるべきことや心構えは学べるものの、亡くした後の「誰にも言えないし、言いたくない、でも誰かに分かってほしい」という複雑な心情を代弁してくれる本はなかなか見つからない。そんな声を当店に来られるお客様からも耳にしていた。 猫と暮らしている方であれば、愛猫の闘病中はもちろん、元気な時でさえ、猫の看取り話を聞いたり読んだりするのは辛いはずだ。その反面、看取りの前後でそうした話に触れると、「みんな同じなんだな」と少しだけ気持ちが楽になることもある。 かくいう私も、二〇二三年の春に二名の店員猫を相次いで亡くしたのだが、その直後から、ずっと読めなかった猫の終活や看取りのエピソードを号泣しながら読み始めた。そのなかで特に、この歌集にも収められている一首に救われ、結果的に、里親として新たに二名の保護猫を迎え入れることになった。 「挽歌集、ぜひ出しましょう!」 猫歌人の構想に私も即答した。看取りの状況もその前後に抱く感情も人それぞれなので、他者が分かったような振りをすることはおこがましいと感じている。逆を言えば、他者から分かったように振舞われたくないとも思っている。二〇一七年に猫本専門店をオープンして以来のつきあいである彼も、同じ感性を持っていると信じていたので、迷うことは何もなかったのである。 これをあとがきに書く私もどうかと思うが、この猫の挽歌集は、今すぐには読めなくても、読めると思えるまで、常備薬のように本棚に並べておいていただくだけで構わないような気がしている。ただ、「本当はまた猫を飼いたいのに、しんどいのでもう飼えない」という思い込みをお持ちだったら、お読みになった後にそれを拭い去って、里親を待っている保護猫に手を差し伸べるきっかけにしていただけると嬉しい。 本書は、当初キャッツミャウブックスの刊行物として出すつもりだったが、猫歌人と猫本専門店の想いに共感してくださった雷鳥社さんから出版されることになった。それによって、より広く、より多くの方々のお手元に届くことを強く願う。そして、みなさんが心に同じことばを思い浮かべることを。 「また猫と」