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過去をもつ人|荒川洋治

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発行 みすず書房
判型 四六判 タテ188mm×ヨコ128mm
頁数 232頁
定価 2,970円 (本体:2,700円)
ISBN 978-4-622-08520-1
Cコード C0095
発行日 2016年7月20日

この三年間に発表されたエッセイのなかから、読書にかかわる61編を選び、書き下ろし「銅のしずく」を添えた。
『読書について』からショーペンハウアーの以下の言葉が引用される。「書く力も資格もない者が書いた冗文や、からっぽ財布を満たそうと、からっぽ脳みそがひねり出した駄作は、書籍全体の九割にのぼる。」その上で、二世紀後の日本の読書は、どうか。「いまは一般的読書が支配。本らしい本を読む人は少ない。読書が消えた時代だ。静かだ。読書とは何かを「考える」ときなのかもしれない。」
また、文学像について。「文学全集がなくなったあと、風景は一変した。個々の作家を読むことだけで、文学像がつくられるようになった。てもとの本だけが光り、過去のものへの視線が消えうせる。(…)おおきなできごとのあとで、詩人や作家たちが、いわば文学「特需」の詩文を順風のなか量産したようすを見て、文学像を形成する人はどうか。あの日以後この国は変わった、私も目覚めたという人たちの一見すなおだが、よく見ると底の浅い単純な詩文。それらを批判的に見つめることは、単純なものに魅せられた読者にはできないだろう。」

文章とことばの新しい情景をつねに視野に入れてきた荒川洋治が、本を読む人におくる、きびしくもあたたかい一冊。

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