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ちゃぶ台11 特集:自分の中にぼけを持て

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発行 ミシマ社
編 ミシマ社
定価 2,000 円+税
判型 四六判変形
頁数 196 ページ
発刊 2023年06月14日
ISBN 9784909394897
Cコード 0030
装丁 漆原悠一(tento)

特集:自分の中にぼけを持て

世の中は、ピントを合わせる方向に進みすぎている、かも――。
生活にも、制度にも、仕事にも、あらゆることに、「ぼけ」が効いてくるのではないか? 

・村瀨孝生さん(「宅老所よりあい」代表) 随筆「僕の老い方研究」
・山極壽一さん インタビュー「山極先生、ゴリラは『ぼけ』るんですか?」
・若林理砂さん(鍼灸師)、上田誠さん(劇作家)、平野愛さん(写真家)
  特別エッセイ「自分の中にぼけを持つための3箇条」

・・・など、「ぼけ」の力に迫る読み物を多数収録。

*特集に寄せて

 自分の中に毒を持て。
 岡本太郎のこのことばには、ちいさな存在でも強くなれるのだから、という前提があっただろう。けれど、時は進み、時代は後退し、私たちのなかの毒はすっかり無毒化されてしまった。消毒剤の成分表には「正しさ」の表記。その割合はけっこう高い。もうひとつ高い成分が「くっきり、はっきり、すっきり」といった「透明性」。もし現代人が自分のなかに毒を持ってしまったら、毒への耐性、免疫が乏しく、毒に呑み込まれるのではなかろうか。最悪のばあい、中毒死の危険すらある。
 では、今、私たちが自分のなかに持つべきは何か?
 こう考えたとき、「ぼけ」だと思い至るに時間はかからない。というのは、私自身が何よりそれを欲していたからだ。
 実際、クリアカットな物言いをする人より、うーんと唸ったり、何を言っているかよくわからない人に惹かれてきた。白黒はっきりつけましょう、といった風潮にも馴染めない。その傾向は年々、強まるばかりだ。
 昨年、『ぼけと利他』(2022年9月刊行)を読んだとき、編集者に大切な要素も「ぼけ」なのでは、とまで思った。きっと、ぼけを欲しているのは私だけでないはずだ。最近でいえば、阪神タイガースの監督に就任した岡田彰布氏の発言が、いちいち話題になる。「いや、おーん、そらそうよ」。そのあまりの「わからなさ」にファンは歓喜する。
 今私たちに欠けているものは、岡本太郎が生きていた(経済発展が地球環境より優先された)時代とは二つの点で異なる。
 ひとつは、現代人のタフさは、毒では培われない。問題が起きたときの対処法が違う。毒で殺すのではなく、溶かす。そういう解消法が必要とされている気がする。
 また、タフになるといっても、昔とちがって強くなるわけではない。それは、包容や寛容といった、質の違うタフさだろう。
 だから、自分の中にぼけを持て、だ。
 最近、老眼が進みつつあるが、私はこの原稿を裸眼で書いている。おかげで、文字はぼけている。そんな人間が企画した雑誌ですが、最後までおつきあいいただければ幸いです。
――本誌編集長 三島邦弘

表紙写真:平野愛

目次

村瀨孝生「僕の老い方研究」(随筆)
益田ミリ「桜の下で」(漫画)
斉藤倫「ひぐれのうえき」(児童文学)
平野愛「自分の中にぼけを持つための三箇条」(エッセイ)
津村記久子「共にぼける」(エッセイ)
土井善晴「パンドラの箱を開けるな!」(随筆)
上田誠「自分の中にぼけを持つための三箇条」(エッセイ)
バッキー井上「あとはオボロ、オボロ影。そしてまた俺は、真俯瞰にいる。」(コラム)
伊藤亜紗「会議の研究(2) 建築現場の青空会議」(論考)
若林理砂「自分の中にぼけを持つための三箇条」(エッセイ)
益田ミリ・平澤一平「宿題」(漫画)
藤原辰史「蛇と民の叙事詩」(論考)
齋藤陽道「一枚と一枚のあいだに、ちいさな祈りがこもるとき」(フォトエッセイ)
榎本俊二「ギャグマンガ家山陰移住ストーリー PART10」(漫画)
山極壽一「山極先生、ゴリラは『ぼけ』るんですか?」(インタビュー)
尾崎世界観「カット」(小説)
内田健太郎「メメント森田さん」(エッセイ)
「書店、再び共有地」(レポート)  
恭文堂書店〈東京・学芸大学〉  句読点〈島根・出雲〉 中村明珍「いぶしてこそ人生」(エッセイ)
滝口悠生「御身と御前」(小説)
寄藤文平「動勢の話。未来の描き方その5」(絵と言葉)
三島邦弘(ブックレビュー)
編集後記

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