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発行 朝日出版社
判型:四六判
ページ数:336ページ
ISBN:9784255013602 / Cコード:C0077
発売日:2023/12/09
定価: 2,178円(本体1,980円+税)
おいしさと創造力をめぐる、全くあたらしい理論&実践の書!
”においを食べる” にしびれました。
学者と詩人、生活者と小学生の
やわらかな心を併せ持つ新料理家、ここに誕生!
――高山なおみさん
知識は楽しみを与えず、楽しみは知識を与えない。このような知識と楽しみの分離こそが哲学の前提であった。だからこそ、知識を楽しむこと(フィロ・ソフィア)としての哲学(フィロ・ソフィア)がありえたのだ。
しかし、本書が示すのは、知識を与える楽しみであり、楽しみを与える知識に他ならない!
知識と楽しみはこうして一体となる。
これは人間がもちうる賢さについての書物だ!
――國分功一郎さん
さっと買って、さっと作って、この上なく幸福になれる。
「トーストを焼くだけ」からはじまる、日々の小さな創造行為。
“面倒”をこえて「料理したくなる」には、どうしたらいいでしょう。
“ほぼ毎日キッチンに立つ”映画研究者が、その手立てを具体的に語ります。
・大方針は、「風味の魅力」にみちびかれること。
「風味」=味+におい。自由に軽やかに、においを食べて世界と触れ合う。
そのよろこびで料理したくなる。人間のにおい解像度は犬並み?
最新の科学研究だけでなく、哲学、文学、映像論の重要テクストを手がかりに、知られざる風味の秘密に迫ります。
・目標は、素材から出発して、ささっとおいしいひと皿が作れるようになること。
1週に1章、その週の課題をクリアしていけば、26週=半年で、だれでも、すすんで自炊をする人=自炊者になれる、がコンセプト。
蒸す、煮る、焼く、揚げる「だけ」のシンプル料理から、「混ぜる」「組み合わせる」、さらに魚をおろして様々に活用するまでステップアップしていきます。
日本酒とワインの新しいあり方、買い物や献立てに悩まないコツ、家事分担も考えます。
・感覚を底上げする、「名曲」のようなレシピを40以上収録しています。
「ヤンソンの誘惑」「鶏肉とパプリカ」「山形のだし」「麦いかのフリット」等々、素朴だけど、素材と出会いなおすような感動のあるものばかり。古今東西の料理書を読みこんだ著者ならではのベストチョイスです。
より先へ進みたくなった人のための懇切丁寧なブックガイドつき!
◎書店員さんから推薦のコメントをいただきました◎
鍋に放たれた春のわかめのように生動する文章から、鮮やかに風味が立ちのぼります。そのかすかなニュアンスに心が動くとき、食の経験は無限に多様な世界の様相へとひらかれ、血のかよったものになるでしょう。自炊者の感動を冷ます「面倒」を軽減するための片付けのコツや、台所の配置を伝授してくれる点も、この本のすばらしいところ。台所のうつくしさに触れた一節は鮮明で、そこを吹き抜ける香りのよい風が見えるようでした。
(東京堂書店・三浦亮太さん)
料理という行為を経て生みだされる香ばしさの層、立ちあがる湯気、口に含んだときの味わいまでもが微細につたわる。ささやかだけれど軽やかじゃない、深いよろこびに満ちた手立ての数々。その探究心に導かれついつい台所へと足が向かいます。
(恵文社一乗寺店・韓千帆さん)
節約や栄養摂取のためだとか、外食やコンビニごはんの罪悪感から「作らなきゃいけない」になっていた、自炊に対する私のもつれ固まった薄暗い気持ちが、読み進めるうちにゆるゆると、優しく解きほぐれていきました。三浦さんの柔らかくも情熱のある語りで、レシピだけではなく、買い物や台所の在り方にアイデアをもらい、食の歴史や文化についての探究心にも火を点けられ、「作りたいな」とわくわくした気持ちが生まれてくるのです。
(早稲田大学生協ブックセンター・橋本さん)
料理をしている人はなにをしているのか。手の動かし方と心の動き方、その両面から洞察を深める本書の筆致は、ロジカルでいてエモーショナル。味覚と嗅覚のあわいを刺激する豊かな風味を、自炊という領域で最大限堪能する。そのために言葉と知識を惜しみなく費やし、料理という行為をその周縁ごと書き尽くそうとするさまは圧巻だ。そんな三浦さんの実直さに袖を引かれ、今日も明日も明後日も、台所に立ち続けていたいと思った。
(往来堂書店・高橋豪太さん)
料理は映画的、というのは知っていたけれど、まさかこれほどまでとは思いませんでした。ひとつの素材とひとつの工程、それだけで目の前の世界の奥行きがどこまでも広がっていく。食がすべてに繋がっているとさえ感じる、知性と身体性が融合された新感覚の料理のすすめ。
(曲線・菅原匠子さん)
目次
序 料理したくなる料理
1 においの際立ち
おいしいトーストの焼き方/においの語源と「感覚順応」/バゲットを穏やかに加熱する/サワードゥを直火焼きする
2 においを食べる
米を炊く/人間の鼻もじつは犬並みにすごい説/味のちがいはにおいのちがい/ふるさとの米の風味さえも
――米を炊く(炊飯器の場合)/米を炊く(鍋の場合)
3 風味イメージ
みそ汁を作る/風味は映像である/風味の分類――①風味インデックス/②風味パターン/③風味シンボル/においはへだたった時間を映す/自炊者=エアベンダー
――だしの取り方/みそ汁
4 セブンにもサイゼリヤにもない風味
ここから自炊するという線引き/セブンイレブンのおいしさ/サイゼリヤのおいしさ/規格品にはない風味の個体差とゆらぎ/青菜のお浸しは海のさざなみのように
――青菜のおひたし/一期一会のトマト・パスタ
5 基礎調味料
感動>面倒/基礎調味料の風味がベースになる/基礎調味料は費用対効果が高い/ノイズキャンセリング力を発揮する/しょうゆ選び/塩選び
6 買い物
何を買うか決められない問題/目利きはするな/専門店の先生たちの見つけ方/あなたが素材を選ぶのではなく、素材があなたを選ぶ
7 蒸す
蒸しものの準備/皮付き野菜を蒸して香りを楽しむ/魚の蒸しもの
――いろいろ野菜の蒸籠蒸し/蒸し野菜のべっこう餡かけ/バーニャカウダ/ひき肉ソース/たちうおの清蒸
8 焼く
肉の焼き目のにおいはどうしてたまらないのか/グラデーションをつけて焼く/ステーキ肉を焼く/フッ素樹脂加工か鉄か/焼き方は人となりを映す/オムレツの焼き方/「ひとり料理の喜び」
――ステーキ
9 煮る
シンプルでおいしい野菜のポタージュ/水に風味とうまみを移す/スープの塩分濃度は0・6%から/野菜のかたちを残すポタージュ/含め煮――調味だしは20:1:1から
――野菜のポタージュ(攪拌する)/野菜のポタージュ(かたちを残す)/調味だし/含め煮/ふきの含め煮/おひたし(アスパラガス、ズッキーニなど)/菊の花のおひたし
10 揚げる、切る
家であえて揚げものをする理由/バットが三つありますか?/春巻き/麦いかのフリット/包丁の使い方にどう慣れるか/作業の進行を直感的にイメージできるようになる
――牡蠣フライ/牡蠣の春巻き/麦いかのフリット
11 動線と片付け
片付けの意義/台所のうつくしさ/プライムスペース/揃えるべきキッチンツール/キッチンは風味の通路
12 カイロモン
風味は誘惑の信号である/カイロモンは他種を誘惑するにおい/変化それ自体がよろこび/F感覚とC感覚
――おでん
13 日本酒
良質な食中酒は自炊を底上げする/アテ化によってシンプル料理が極上に/酒はパスポート/ベーシックな日本酒とは/先生を見つけ、入門用の酒を選ぶ/燗をつけてみる
――シンプルなアテいろいろ/お燗
14 ワイン
面倒ではないワイン/自炊のためのワイン保存システム/「自然な造りのワイン」とその歴史/インポーターで選ぶ/ワインの先生に学ぶ/ワインを買いにいきましょう
15 青魚
季節の魚の風味に触発されて/風味の喚起力は鮮度に比例する/あじといわしは最上の美味/キッチンに魚の通り道を作る/あじをさばいて食べる/青魚、絶対のふた品
――あじのさばき方/あじのなめろう/しめさば
16 白身魚など
中型魚をさばく/フライパンでポワレにする/魚を長く多面的に味わい尽くす/生のまま魚を熟成する
――平造り、そぎ造り/白身魚のポワレ、ムニエル/ブールブランソース/焦がしバター(ブールノワゼット)/サルサヴェルデ/こんぶ締め/干物/あらのスープ/あらのだし汁で作るパエリア/白身魚の熟成
17 1+1
魚一種に野菜一種の即興料理を作ってみる/生魚のカルパッチョ+野菜/風味のモンタージュ/焼き魚+野菜/魚と野菜のスープ仕立て
――あじのカルパッチョ、ルッコラ添え/いわしの直火焼き、茹でたじゃがいも添え/フィッシュ・ベジタブル・スープ/牡蠣とぎんなんのスープ
18 混ぜる
百獣ごはん/ワンプレート・ランチ/混ぜる料理の伝統的な型/サラダうどんとそばは格別においしい
――ちらし寿司/サラダうどん、そば
19 春夏の定番レシピ
歌い継がれ愛されてきた民謡のような名レシピ/春/夏/ノー・シーズンの定番
――あさりと豚肉のアレンテージョ風/生わかめとたけのこ/ふきのとうみそ/ラタトゥイユ/ガスパチョ/山形のだし/ピコデガヨ/生ハムとバターのバゲットサンド/干ししいたけとちりめんじゃこの炊き込みごはん
20 秋冬の定番レシピ
秋/冬/ノー・シーズンの定番
――きのこの当座煮/きのこのにんにく炒め/ほうとう鍋/バジルペースト/さんまのわたソース/ヤンソンの誘惑/かぶと牡蠣のグラタン/焼きかぶのサラダ、かぶのソース/筑前煮/じゃがいもセロリ/鶏肉とパプリカ
21 乾物
乾物の魅力/家に常備するものリスト/塩して熟成する
――鞍掛豆のサラダ/トルティーヤ/塩もみ、浅漬け、かぶ酢/塩豚
22 発酵
発酵保存食品を自作する意味/日々の献立ての基本
――白菜漬け/甘酒/かぶら寿司
23 うつわとスタイル
なぜスタイリングによって料理はよりおいしくなるのか/練習問題/「ねばならぬ」ではなく/うつわの質感/雑多を許容する
24 ファーム・トゥ・テーブルとギアチェンジ
ひとはいつから「素材を活かすべき」といい始めたのか/スローとファストのギアチェンジ/「群島としてある世界の肯定」/続・人間の鼻もじつは犬並みにすごい説/ハンバーガー
――ハンバーガー/クラフト・コーラ
25 索引と徴候
別の時空につながるにおい/索引がひらく過去、徴候が予感させる近未来/微分回路(徴候)と積分回路(索引)/風味の解像度とは/生活史を積分する/食の幸福
26 家事と環境
家事分担の不均衡/ふつうのすばらしさを再発見する/環境問題について
――赤飯
参考文献
ブックガイド
著者紹介
三浦哲哉(みうら・てつや)
青山学院大学文学部比較芸術学科教授。映画批評・研究、表象文化論。食についての執筆もおこなう。1976年福島県郡山市生まれ。東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻博士課程修了。著書に『サスペンス映画史』(みすず書房、2012年)『映画とは何か――フランス映画思想史』(筑摩選書、2014年)『『ハッピーアワー』論』(羽鳥書店、2018年)『食べたくなる本』(みすず書房、2019年)『LAフード・ダイアリー』(講談社、2021年)。共編著に『オーバー・ザ・シネマ――映画「超」討議』(フィルムアート社、2018年)。訳書に『ジム・ジャームッシュ・インタビューズ――映画監督ジム・ジャームッシュの歴史』(東邦出版、2006年)。
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