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発行 七月堂
2023/05/26発行
四六判 仮フランス装 帯付 栞付
装画:秋山花/栞文:松下育男
「いちばんやさしい重み」
迷うことをする。
誰かといっしょに。
私といっしょに。
たとえ今日も答えにたどり着かなかったとしても、そんな日々が、いつしか帰る場所になっていく。
本作をお読みいただき、秋山花さんに描き下ろしていただいた絵を装画として使用しました。
栞文は、佐野さんが初期の頃より通われていた「詩の教室」主催の松下育男さんです。
ぜひたくさんの方にお手にとってご覧いただきたい一冊となりました。
どうぞよろしくお願いいたします。
【著者コメント】
この『夢にも思わなかった』という詩集を読んで、いきている切なさも、迷いながらの毎日もいいんだと、詩のことばっていいなと誰かに思ってもらえたら幸いです。
詩のすきな方だけでなく、本がすきな方、こころのことに関心のある方にも届いてくれたらいいなと思います。
「ただなか」
いつのまにか
洗濯物の干し方も覚え
自分で珈琲を淹れている
天気のいい休日に
はりきって台所に立ち
レモンケーキをつくる
その傍らで僕は
詩を一つ
つい何日か前
腕の中に
泣いているきみを包んだ夜があった
べつに
もう大丈夫になって
けろっとしてるわけじゃない
そのことを知っている
あわだつ
ただなかに
ふたりまみれて
まだ午前中
昼はチャーハンだったね
かまぼこ
マスターからもらったやつ
まだすこしあるよね
一日三度
飯を食い
歯を磨く
そうだよね と
思うんだよ
一日にたった三度でいい
きみといるただなかのこと
ちゃんと思っていたい
毛布のような
マントだということが
わかってくるから
ほら
こうばしい
ただなかの香りが
こちらへ伝ってきた
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