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韓国映画から見る、激動の韓国近現代史|崔盛旭
¥2,420
発行 書肆侃侃房 四六判、並製、368ページ 定価:本体2,200円+税 ISBN978-4-86385-624-0 C0074 デザイン 戸塚泰雄(nu) 植民地支配、南北分断と朝鮮戦争、長きにわたる軍事独裁、そして国民の手で勝ち取った民主化……。「3・1独立運動」「済州島4・3事件」「光州事件」「6月抗争」など激動そのものだった韓国の近現代史とそのなかで形作られてきた「儒教的家父長社会」。近年ますます存在感を高めている「韓国映画」を題材に、そこから透けて見える歴史や社会問題を解説。韓国という国のダイナミズムをより深く、より立体的に理解するための一冊である。 『パラサイト 半地下の家族』『タクシー運転手~約束は海を越えて~』『KCIA 南山の部長たち』『1987、ある闘いの真実』『ベイビー・ブローカー』『ミナリ』『はちどり』『息もできない』『キングメーカー 大統領を作った男』『高地戦』『金子文子と朴烈』『グエムル-漢江の怪物-』『焼肉ドラゴン』『私の少女』……韓国映画44本から激動の歴史を読み解く。 韓国映画はなぜ、悔恨と希望を同時に語るのか。 人間の奥底にひそむ心優しさに訴えかけるのか。 本書は現代の韓国映画を造り上げてきた、 人間の強さをめぐるエッセイである。 浅い水の戯れは愉しく美しい。 深い淵を覗きこむ者は、隠された物語を知る。 歴史という名の知恵のことだ。 ――四方田犬彦(映画誌・比較文学研究家) 【目次】 はじめに 凡例 第1章 韓国と日本・アメリカ・北朝鮮 韓国と日本 ❶『ロスト・メモリーズ』歴史「改変」映画は新たな解釈の可能性を提示できるか ❷『密偵』英雄か、逆賊か 歴史の曖昧さゆえに成し得た物語 ❸『金子文子と朴烈』〝反日〟映画が再発見した、ある日本人女性の強烈な生 ❹『マルモイ ことばあつめ』言葉が奪われた時代に、言葉を守り抜いた人々 ❺『哭声/コクソン』韓国社会における、よそ者/日常としての日本 韓国とアメリカ・北朝鮮 ❻『スウィング・キッズ』戦争とミュージカルのコントラストが叫ぶ「イデオロギーなんてくそったれ!」 ❼『高地戦』人間に優先されるイデオロギーはない 無意味な攻防戦に散った若い命 ➑ 『グエムル-漢江の怪物-』少女はなぜ死ななければならなかったのか? 〝反米〟に透けて見える映画の真のメッセージ ❾ 『白頭山大噴火』殺し合う南北/抱きしめ合う南北、映画に見る南北関係の変遷 ❿ 『レッド・ファミリー』北朝鮮スパイの歴史と映画が描く韓国の欲望 コリアン・ディアスポラ ⓫ 『チスル』韓国現代史最大のタブー「済州島4・3事件」への鎮魂歌 ⓬『焼肉ドラゴン』彼らが日本(ここ)にいる理由 家族史に見る「在日」の終わらないディアスポラ ⓭『ミナリ』アメリカは「夢」か「逃避」か? さまよう韓国人たち ⓮『ミッドナイト・ランナー』民族の再会から他者の排除へ 韓国映画は朝鮮族をどう描いたか コラム監督論①チャン・リュル あらゆる境界を越えて東アジアを周遊する 第2章 軍事独裁から見る韓国現代史 朴正煕政権 ⓯『国際市場で逢いましょう』それでも「あの時代は良かった」? 独裁時代と父親たちに贈るノスタルジア ⓰『7番房の奇跡』法は公正なのか? 独裁時代の暗黒司法史と死刑執行停止のいま ⓱『KCIA 南山の部長たち』正義心か、ジェラシーか 独裁者を撃ち抜く弾丸が意味するもの 全斗煥政権 ⓲『タクシー運転手~約束は海を越えて~』韓国現代史上最悪の虐殺「光州事件」の真相に挑んだ劇映画 ⓳ 『弁護人』 仕立てられた「アカ」のために闘った人権弁護士 盧武鉉大統領前史 ⓴ 『1987、ある闘いの真実』二人の大学生の死が導いた独裁の終焉と民主化への一歩 コラム監督論②イ・チャンドン 作品に見る光州事件と1980年代韓国現代史 第3章 韓国を分断するものたち 格差 ㉑『パラサイト 半地下の家族』韓国社会の格差を浮き彫りにする三つのキーワードから見えてくるもの ㉒ 『国家が破産する日』政経癒着の帰結としての「IMF通貨危機」、それがもたらした分断社会 ㉓『バーニング 劇場版』「村上春樹ブーム」と「喪失」の90年代韓国を、現代の若者像に翻訳する 儒教的男性社会 ㉔『はちどり』 少女の眼差しが晒す韓国儒教社会と暴力の連鎖 ㉕『82年生まれ、キム・ジヨン』 抑圧に押し潰された女性たちが、自らの声を取り戻すまで ㉖ 『息もできない』底辺に生きる男が「悪口」の果てに求めた「家族のメロドラマ」 ㉗『お嬢さん』男もヒエラルキーも乗り越えて 《帝国》と《植民地》の女性、勝利の連帯へ ㉘『ハハハ』〝あるべき男性像〟を笑い飛ばしてくれる、大いなる人間賛歌 マイノリティ ㉙ 『ファイター、北からの挑戦者』現在進行形のディアスポラ「脱北者」の少女が拳で立ち向かう韓国 ㉚『バッカス・レディ』歴史の影に取り残された女性による、男性への復讐譚 ㉛ 『私の少女』儒教・異性愛・ホモソーシャルな韓国社会にLGBTQの未来はあるか ㉜『トガニ 幼き瞳の告発』国民の怒りを呼び起こし、社会を変えた一本の映画 コラム監督論③女性監督の系譜 映画『オマージュ』が復元する女性(映画)史 第4章 韓国の〝今〟を考える 政治とメディア ㉝『キングメーカー 大統領を作った男』選挙の負のレガシーを作った男たち 「カルラチギ」の起源をたどる ㉞ 『アシュラ』大統領選を前に《逆走行》した一本の映画から、政経癒着の歴史を紐解く ㉟ 『共犯者たち』権力とメディアの関係性を皮肉に暴くドキュメンタリー 社会問題 ㊱『冬の小鳥』踏みにじられた人権 韓国養子縁組問題の背景を探る ㊲『ベイビー・ブローカー』韓国で映画を撮った日本人監督たち 浮かび上がる韓国 ㊳『殺人の追憶』連続殺人と軍事独裁という絶妙なメタファー ㊴『サムジンカンパニー1995』「英語」を武器に下剋上を目論む高卒女性たちの反乱 ㊵『整形水』「美」は誰の欲望か? 外見至上主義と整形大国の関係性 ㊶『明日へ』勝ち取る喜びをもとめて デモ大国・韓国における闘うことの意味 ㊷ 『サバハ』新興宗教が乱立する韓国社会 エセにすがる人々の宗教的心性 ㊸『君の誕生日』セウォル号事件 遺族の悲しみに「寄り添う」ということ ㊹ 『D.P.-脱走兵追跡官-』韓国兵役物語 若者たちの絶望と軍隊をめぐる諸問題 コラム監督論④キム・ギヨン 〝怪物〟監督の全盛期に見る韓国社会の深層 おわりに 韓国近現代史年表 韓国歴代大統領詳細 索引 i 初出一覧 ii 主な参考文献・検索サイト v 【著者プロフィール】 崔盛旭(チェ・ソンウク) 1969年韓国生まれ。映画研究者。明治学院大学大学院で芸術学(映画専攻)博士号取得。明治学院大学、東京工業大学、名古屋大学、武蔵大学、フェリス女学院大学で非常勤講師として、韓国を含む東アジア映画、韓国近現代史、韓国語などを教えている。著書に『今井正 戦時と戦後のあいだ』(クレイン)、共著に『韓国映画で学ぶ韓国社会と歴史』(キネマ旬報社)、『日本映画は生きている 第4巻 スクリーンのなかの他者』(岩波書店)、『韓国女性映画 わたしたちの物語』(河出書房新社)など。日韓の映画を中心に映画の魅力を、文化や社会的背景を交えながら伝える仕事に取り組んでいる。
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文学ムック「ことばと」vol.7
¥1,980
発行 書肆侃侃房 定価:本体1,800 円+税 A5、並製、368 ページ ISBN978-4-86385-600-4 C0495 編集長/佐々木敦 ロゴマーク/石黒正数 表紙・本文デザイン/戸塚泰雄 装画・挿絵/近藤恵介 【巻頭表現】 千葉雅也「間違えたらもう一度繰り返せ」 【第5回ことばと新人賞】 池谷和浩「フルトラッキング・プリンセサイザ」 佳作 藤野「おとむらいに誘われて」 選考座談会(江國香織、滝口悠生、豊﨑由美、山下澄人、佐々木敦) 【特集:ことばとことば】 ◎創作 大沼恵太「ここだけの話」 大前粟生「パラパラ」 片島麦子「メントリの始末」 木下古栗「君たちはどう生きるか」 佐川恭一「不服」 瀬尾夏美「頬をなぞる」 戸田真琴「きっとしらない国」 法月綸太郎「虱博士」 笛宮ヱリ子「白い噓」 福田節郎「才能」 保坂和志「ことばとショーケン」 町屋良平「植物」 【本がなければ生きていけない】 佐々木敦「蔵書の減少と本棚の増殖」
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製本と編集者2
¥1,320
編集・構成:笠井瑠美子 出版:十七時退勤社 A5判並製/本文108頁 本体価格:1,200円 〈製本の現場から、三人の編集者へ問いかけるこれからの本についてのインタビュー、シリーズ第二弾〉 これまでの出版業界にとって本を作るということは疑う余地もなく、紙の本を作るということだった。電子書籍が登場し、多くの人たちが当たり前にそれを読む端末を手にし、紙の本の価値を問われるようになって久しいが、それでもまだ紙の本のほうが商売になる(儲かる)という理由で、なんだかんだと紙の本は作られ続けている。けれど商売になるかどうか以前に、どうして紙の本をいいと思うのか説明できるようになりたい。それは自分がこの先もこの仕事を続けていく理由に繋がるはずだからだ。 * * シリーズ第二弾、以下お三方にお話を伺いました。 松井祐輔(まつい・ゆうすけ ) 一九八四年、愛知県名古屋市生まれ、春日井市育ち。千葉大学文学部史学科卒。出版取次の株式会社太洋社に勤務の後、株式会社筑摩書房、NUMABOOKSを経て、現在は無所属。二〇一四年に『HAB』を刊行。以降は断続的に『ナンセンスな問い』(友田とん)、『山學ノオト』(青木真兵、青木海青子)、『台湾書店百年の物語』(台湾独立書店文化協会)、『パリと本屋さん』(パリュスあや子)などの書籍を刊行。二〇一四年から「小屋BOOKS」、二〇一五年には移転し「H.A.Bookstore」として実店舗を運営。二〇二〇年に閉店し、現在はwebのみで販売を行う。並行して取次業も担う。本を売って生きている。 三輪侑紀子(みわ・ゆきこ) 一九八七年、静岡県浜松市生まれ。二〇一〇年頃から角川春樹事務所書籍編集部アルバイト。二〇一四年頃から編集部員に。二〇一九年岩波書店入社。所属は児童書編集部。二〇二〇年に出産。二〇二一年頃から『図書』編集部にも参加。二〇二三年の担当書は『地図と星座の少女』『ローラ・ディーンにふりまわされてる』『クロスオーバー』『モノクロの街の夜明けに』『ナイチンゲールが歌ってる』。 藤枝大(ふじえ・だい) 一九八九年に八丈島で生まれ、関西で育つ。未知谷を経て、二〇一七年より書肆侃侃房で勤務。主に詩歌、海外文学、人文書、文芸誌の編集をしている。短歌ムック「ねむらない樹」 (編集統括)、文学ムック「ことばと」、「現代短歌クラシックス」シリーズのほか、『左川ちか全集』『葛原妙子歌集』『はじめまして現代川柳』『うたうおばけ』『月面文字翻刻一例』『象の旅』『赤の自伝』『路上の陽光』『ベルクソン思想の現在』などの編集を担当。海外文学と詩歌の書店「本のあるところ ajiro」を二〇一八年に立ち上げ、運営している。
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銭湯|福田節郎
¥1,760
SOLD OUT
発行 書肆侃侃房 四六判上製、224ページ 定価:本体1,600円+税 ISBN978-4-86385-577-9 C0093 装丁:加藤賢策(LABORATORIES) 読む/書くを通して、人は自由にどこにでも行かれる。 言葉にはこんなことができるのだし、言葉にしかこんなことはできない。 見事な文章体力の、風通しのいいチャーミングな小説。 ーー江國香織(小説家) 呆れ返ること必至! 笑っちゃうこと不可避!! なのにグッときちゃうこの不思議!!! 新人はヘンテコなくらいがちょうどいい。 人間は少しダメなくらいがちょうどいい。 生き方はゆるいくらいがちょうどいい。 だから福田節郎の小説は、すごくいい。 ーー豊﨑由美(書評家) 【あらすじ】 知り合いから頼まれて顔も知らない人と待ち合わせをする羽目になった俺(水上)。この人と思ったキザキさんは別の男と去ってゆき、代わりに現れたサカナさんに誘われるままに不思議な居酒屋で飲み明かし、まさに迷宮にはまり込んでゆく、心理的ロードムービーのような作品。ほかに書き下ろし「Maxとき」も収録。 【著者プロフィール】 福田節郎(ふくだ・せつろう) 1981年神奈川県生まれ。「銭湯」で第4回ことばと新人賞受賞。
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ことばと vol.6
¥1,870
発行 書肆侃侃房 A5、並製、336ページ 定価:本体1,700円+税 ISBN978-4-86385-548-9 C0495 編集長/佐々木敦 ロゴマーク/石黒正数 表紙・本文デザイン/戸塚泰雄 装画・挿絵/近藤恵介 【巻頭表現】 谷川俊太郎「人と人」 【第4回ことばと新人賞】 受賞作 福田節郎「銭湯」 佳作 井口可奈「かにくはなくては」 選考座談会(選考委員:江國香織、滝口悠生、豊﨑由美、山下澄人、佐々木敦) 【特集 ことばと戦争 】 ◎インタビュー 高橋源一郎「戦時下のことば、最前線のことば」(聞き手:佐々木敦) ◎小説 北野勇作「戦争の夢」 高山羽根子「朝の喫茶店・内装」 早助よう子「風船爆弾をつくった祖母の話」 吉村萬壱「イチコロ」 ◎評論 小峰ひずみ「人民武装論 RHYMESTERを中心に」 水上文「聴き取られない声を聴く――『戦争は女の顔をしていない』と日本」 【創作】 小山田浩子「あさみぎよひだり トミヱさん(二)」 仙田学「雪ちゃんなんてだいっきらい!」 【翻訳】 ロシア――戦争に反対する詩人たち 解説・訳 高柳聡子 戦争について黙っていてはいけない タチヤーナ・ヴォリツカヤ 「ママ、ママ、戦争だ、戦争だよ!」 アーリャ・ハイトリナ 時の切断 エカテリーナ・ヒノフケル くち アレクセイ・ボロネンコ ロシアの民族料理 ヤン・クントゥール 「ブチャ」(罪なく殺されたすべての人びとの記憶に) エカテリーナ・ザジルコ 無題 【本がなければ生きていけない】 韻踏み夫「世界のなかに置かれた書物」 杉田協士「喫茶店」
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悪友|榊原紘
¥1,980
発行 書肆侃侃房 A5判変形、並製、128ページ 定価:本体1800円+税 ISBN978-4-86385-405-5 C0092 装画:ハタ屋 栞:大森静佳、染野太朗、永井祐、野口あや子、長嶋有 第二回笹井宏之賞大賞受賞 「一首一首が頑なに手放そうとしない純粋な心のきらめきのようなものを、とても得難いものだと感じた。(……)奇跡が、この歌集のなかでは何度も起こっている気がする」(大森静佳) 「普遍への眼差しを一貫して保った、厳しさと勇気にあふれた歌集だと思う」(染野太朗) 「一冊を読むと、世の中から半分ずれてちょっと格好良くやっている「僕」たちのよるべない魂が感じられる。応援しよう。遠くからだけど」(永井祐) 「どうか勝手に縛られて落ち着かないで、ゆらゆらと濡れて乾いていく作者の息遣いを聞いてみてほしい」(野口あや子) 「作中の彼らは、自分らだけで伝達しあえる符丁で、まじないのように精神を共有しあう。それを作者は連作の題に据え、連作内ではその説明をしなかった。そのすべての言葉の取り扱いに対し、僕は信を置く」(長嶋有) 【歌集より5首】 ことばから補助輪が外されてなお漕ぎ出した日のことを言うから 雪の染みた靴から君が伸びている そんな顔で笑うやつがあるか 散るときがいちばん嬉しそうだった、そしてゆったり羽織るパーカー 立ちながら靴を履くときやや泳ぐその手のいっときの岸になる スノードームに雪を降らせてその奥のあなたが話すあなたの故郷 【著者プロフィール】 榊原紘(さかきばら・ひろ) 1992 年 愛知県(三河)生まれ。 2012 年 「京大短歌」に参加。 2015 年 未来短歌会(黒瀬欄)に入会。 2019 年 第2回笹井宏之賞大賞受賞、第31回歌壇賞次席。 現在は同人「遠泳」にのみ参加している。
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短歌ムック ねむらない樹 vol.10
¥1,650
SOLD OUT
発行 書肆侃侃房 A5、並製、272ページ 定価:本体1,500円+税 ISBN978-4-86385-562-5 C0492 装幀:成原亜美 装画:東直子 ねむらないただ一本の樹となってあなたのワンピースに実を落とす(笹井宏之) 特集=第5回笹井宏之賞発表/15年目の笹井宏之 【特集1 第5回笹井宏之賞発表】 ◎大賞 左沢森「似た気持ち」、瀬口真司「パーチ」 ◎大森静佳賞 中村育「風は吹く、無数の朝」 ◎染野太朗賞 手取川由紀「羽化のメソッド」 ◎永井祐賞 野川りく「遡上 あるいは三人の女」 ◎野口あや子賞 八重樫拓也「晩年」 ◎Moment Joon賞 橙田千尋「Liminal」 ◎選考座談会 大森静佳×染野太朗×永井祐×野口あや子×Moment Joon 最終選考候補作 【特集2 15年目の笹井宏之】 第一歌集『ひとさらい』が2008年に刊行されてから15年。彗星のように短歌の世界に登場し、26歳で生涯を終えた歌人笹井宏之。作歌期間は4年半しかなかったが、その間に数々のみずみずしい歌を遺した。没後10年となる2019年には笹井宏之賞が創設され、短歌の登竜門となっている。10号の節目にいま一度彼の足跡を追う、全130ページの大特集。 ◎座談会「笹井宏之という歌人の自由さとは何だったのか」 穂村弘×東直子×土岐友浩 ◎インタビュー 筒井孝司・和子 「音楽と短歌、そして仲間に支えられた日々」 ◎論考 瀬戸夏子「名づけられないままに象徴となってしまうこと」 山田航「ゼロ年代文化の中の笹井宏之」 江戸雪「はっさくになりなさい──『ひとさらい』再読」 ◎エッセイ 宇都宮敦「「ちかく」の〈やかん〉と「とおく」の〈公務〉」 伊藤一彦「笹井さんと言葉」 荻原裕幸「ひろゆきの名を」 吉川宏志「『ひとさらい』評釈の試み」 斉藤斎藤「俺の勝手」 しんくわ「碗琴」 生田亜々子「純粋ファンです」 今泉洋子「笹井宏之さんとの思い出を辿って」 森戸孝子「あなたへ伝えたいこと、そしてつないでほしいこと」 平原奈央子「内なる宇宙と現実の汽水域」 須藤歩実「笹井宏之と彼を支えた仲間たち」 森山希代子「ふるさと、家族の懐に育まれて」 ◎アンケート 私の好きな三首 笹公人「40歳の笹井宏之」 戸田響子「渇望の記憶」 伊舎堂仁「むだづかい」 橋爪志保「ぜいたくな力」 水野葵以「雨と月とワームホール」 笹川諒「言葉の世界による救済」 ◎未発表作品 短歌50首(加藤治郎選) 詩12篇(「ぽろぽろ」「どこかの交差点で」「オレンジ」「眠れない夜」「祈り」「夢見る雨上がり」「しるし」「こんな世界でも」「言葉を書こう」「まぶた」「夢」「羽化」) 俳句/川柳20句(編集部選) エッセイ「ことばは雨のようだ」「夏の匂い」 小説「水葬の街」 ◎詩 筒井孝徳「長い沈黙」 【特集3 2022年の収穫アンケート】 水原紫苑 枡野浩一 千葉聡 藪内亮輔 石川美南 尾崎まゆみ 松村正直 【作品20首】 toron*「エンドユーザー」 木下侑介「ヘッドホン・トラックス」 佐々木朔「Rain rader」 帷子つらね「cue (all about a fiction)」 田村穂隆「玉眼」 佐藤弓生「ささがにの」 魚村晋太郎「天職」 奥田亡羊「俗武者」 石井僚一「○」 【巻頭表現】 大白小蟹 【特別掲載】 涌田悠「生まれ続ける未知のよろこび──『千年とハッ』創作レポート」 金子冬実「しずくひとつ、取りさった幸福──葛原妙子の文箱から」 【書評】 山下翔「変われないもの」……『寂しさでしか殺せない最強のうさぎ』(山田航) 山崎聡子「恍惚として、うたを」……『山中智恵子歌集』(水原紫苑編) 渡辺松男「カテゴライズからの自由」……『ヘクタール』(大森静佳) 奥村知世「美と不穏」……『ゴダールの悪夢』(尾崎まゆみ) 千葉聡「驚かされました」……『海辺のローラーコースター』(加藤治郎) 井上法子「わたしたちのまわりは、」……『オールアラウンドユー』(木下龍也) 小野田光「言葉にする静かな楽しさ」……『うすがみの銀河』(鈴木加成太) 久石ソナ「映画のような日常を暮らす」……『永遠よりも少し短い日常』(荻原裕幸) 黒瀬珂瀾「忘れものというたまもの。」……『岡井隆の忘れもの』(岡井隆) 西村曜「適当な距離」……『アップライト』(鯨井可菜子) 大井学「謎と問い」……『memorabilia/drift』(中島裕介) 虫武一俊「人生という瞬間」……『weathercocks』(廣野翔一) 【歌人の一週間】 伊豆みつ 手塚美楽 廣野翔一 谷川電話 【忘れがたい歌人・歌書】 林和清「四倍(クアドラプル)になる世界」 【文鳥は一本脚で夢をみる⑩】 梅﨑実奈「いにしえを背負う者」 【ねむらない短歌時評⑩】 寺井龍哉「時にはむかしの話を」 【短歌に近づく⑤】 細馬宏通「ひらかなの激情」 【読者投稿欄】 選者=内山晶太、花山周子 (テーマ:「電」もしくは自由)
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文学ムック ことばと vol.5
¥1,650
発行 書肆侃侃房 A5、並製、208ページ 予価:本体1,500円+税 ISBN978-4-86385-516-8 C0495 編集長/佐々木敦 ロゴマーク/石黒正数 表紙・本文デザイン/戸塚泰雄 装画・挿絵/近藤恵介 【巻頭表現】 川勝徳重「パイプのけむり」 【特集 ことばとわたし】 ◎小説 円城塔「時をかける少女」 片岡義男「ブカレストから来た」 草野なつか「丘の船着き場」 長嶋有「舟」 樋口恭介「適切な距離」 古谷利裕「騙されない者は彷徨う」 ◎評論 江南亜美子「更新される、「私小説」」 大滝瓶太「幽体離脱する「私」」 ◎対談 桜庭一樹×西村紗知「「私」はどこからやってきたか?」 【創作】 戸田真琴「まい・おーるど・ふれんど」 李琴峰「怨念花が呪う島」 【翻訳】 ブレンダ・ロサーノ 成田瑞穂訳「石はどんなふうに考える」 【本がなければ生きていけない】 豊﨑由美「本が怖い」 吉開菜央「私の原点は絵本」 ● ことばと バックナンバー https://honnosiori.buyshop.jp/search?q=ことばと%E3%80%80書肆侃侃房
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結晶質|安田茜
¥2,200
発行 書肆侃侃房 四六判変形、上製、192ページ 定価:本体2,000円+税 ISBN978-4-86385-566-3 C0092 装丁 佐野裕哉 栞 江戸雪 神野紗希 堂園昌彦 雪山を裂いて列車がゆくようにわたしがわたしの王であること 第4回笹井宏之賞神野紗希賞受賞の著者による第一歌集。 安田さんの歌には、「それでも」言葉を信じて光のほうを向き直す、高潔な魂が震えている。 ──────神野紗希(栞文より) ゆめでも現実でもなく、さらには妄想でも幻想でもない不思議な空間がくりかえし創り出される一冊のなかで、怒りの感情はとくに激しい。激しく強くかっこいい。 ──────江戸雪(栞文より) 安田さんの歌の持つ抽象的で硬質な詩情は日々の暮らしの中から生まれており、そしてまた日々の暮らしに浸されるとき、律動を持ち人々を癒やす、そういう種類のものなのだと思う。 ──────堂園昌彦(栞文より) 【収録歌より】 冬にしてきみのすべてに触れ得ないこともうれしく手ですくう水 髪に闇なじませながら泣きながら薔薇ばらばらにする夜半がある 戴冠の日も風の日もおもうのは遠くのことや白さについて 死者にくちなし生者に語ることばなしあなたに降りそそぐ雪もなし 石英を朝のひかりがつらぬいていまかなしみがありふれてゆく 【栞】 神野紗希「遠くを、信じる」 江戸雪「アンビバレントパワー」 堂園昌彦「暮らしの中から生まれた結晶」 【著者プロフィール】 安田茜(やすだ・あかね) 1994年、京都府生まれ。「立命短歌」「京大短歌」「塔」出身。現在は「西瓜」所属。2016年、第6回塔新人賞。2022年、第4回笹井宏之賞神野紗希賞。
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ことばと vol.4
¥1,760
発行 書肆侃侃房 A5、並製、264ページ 定価:本体1,600円+税 ISBN978-4-86385-493-2 C0495 編集長/佐々木敦 ロゴマーク/石黒正数 表紙・本文デザイン/戸塚泰雄 装画・挿絵/近藤恵介 【巻頭表現】 菅原睦子「大丈夫、聞こえているよ。」 【創作】 上田岳弘「領土」 東山彰良「REASON TO BELIEVE」 古川日出男「太陽 The Sun」 マーサ・ナカムラ「人形師」 【特集 ことばとからだ】 ◎小説 金原ひとみ「アイ ドント スメル」 戸田真琴「海はほんとうにあった」 藤野可織「心臓」 松波太郎「あカ佐タな」 ◎対談 千葉雅也×村田沙耶香「水槽の中のからだ/水槽の中のことば」 ◎インタビュー 松波太郎「コトバのカラダにハリを打つ」 【第三回ことばと新人賞】 笛宮ヱリ子「だ」 【翻訳】 トリスタン・ガルシア「地球外存在」(小嶋恭道訳) 【本がなければ生きていけない】 小田原のどか「本にまつわるエッセイ」 和田彩花「「本が好き」のためらい」 (出版社商品ページより)
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文学ムック ことばと vol.2
¥1,870
出版 書肆侃侃房 A5、並製、328ページ 定価:本体1,700円+税 ISBN978-4-86385-423-9 C0495 編集長/佐々木敦 ロゴマーク/石黒正数 表紙・本文デザイン/戸塚泰雄 装画・挿絵/近藤恵介 【巻頭表現】 いとうひでみ「生業」 【創作】 佐藤亜紀「性頑愚にして強訴を好む」 瀬尾夏美「押入れは洞窟」 滝口悠生「夜の電話のための戯曲」 【特集 ことばと演劇】 ◎戯曲 飴屋法水「スワン666」 岡田利規「THE VACUUM CLEANER」 ◎小説 綾門優季「唯一無二」 犬飼勝哉「住吉コーポ二〇一」 鳥山フキ「どこ行った」 中村大地「はなのゆくえ」 松原俊太郎「イヌに捧ぐ」 宮﨑玲奈「蟹いいよ」 本橋龍「植物の家」 ◎対談 山下澄人×佐々木敦「演戯の生成、小説の誕生」 【第一回ことばと新人賞】 佳作 金名サメリ「道ジュネー」 永井太郎「残って拡散する響き」 【翻訳】 アリ・スミス「本当の短編小説」(木原善彦訳) 【本がなければ生きていけない】 久保明教「あいだをさぐる」 児玉雨子「等身大九龍城」 (出版社商品ページより)
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文学ムック ことばと vol.1
¥1,650
出版 書肆侃侃房 A5、並製、240ページ 定価:本体1,500円+税 ISBN978-4-86385-396-6 C0495 2刷 編集長/佐々木敦 ロゴマーク/石黒正数 表紙・本文デザイン/戸塚泰雄 装画・挿絵/近藤恵介 【巻頭表現】 福田尚代「文房具たち」 【座談会】 柴田聡子×又吉直樹×佐々木敦「「言葉と何か」についての120分」 【創作】 阿部和重「Hunters And Collectors」 小笠原鳥類「エルガーを聞きながら書いた小説」 片島麦子「レースの村」 小林エリカ「緋色の習作 A Study in Scarlet」 佐川恭一「舞踏会」 千葉雅也「マジックミラー」 保坂和志「胸さわぎ」 マーサ・ナカムラ「帝都の墓/阿弥家の墓参り」 山本浩貴(いぬのせなか座)「pot hole(楽器のような音)」 【翻訳】 ウティット・へーマムーン「心焦がすサイゴン」(福冨渉訳) 【本がなければ生きていけない】 伊藤亜紗「二つの本棚」 堤雄一(古書 防破堤)「とともに考える」 (出版社商品ページより)
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文学ムック ことばと vol.3
¥1,760
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出版 書肆侃侃房 A5、並製、288ページ 定価:本体1,600円+税 ISBN978-4-86385-455-0 C0495 編集長/佐々木敦 ロゴマーク/石黒正数 表紙・本文デザイン/戸塚泰雄 装画・挿絵/近藤恵介 【巻頭表現】 森栄喜「Die-in Tulips」 【創作】 青柳菜摘「フジミ楼蜂」 市原佐都子「蝶々夫人」 柴崎友香「知らない街のように」 水沢なお「生殖する光」 【特集 ことばと音楽】 ◎小説 柴田聡子「新曲・Best Friend」 町田康「むかし話」 ◎歌詞 イ・ラン「私はある女の生き様を想像してみる」(カン・バンファ訳) 小島ケイタニーラブ「帰ってきたシーラカンス」 崎山蒼志「時間」 澤部渡(スカート)「私が夢からさめたら」 さや(テニスコーツ)「その夢のなか」 澁谷浩次(yumbo)「歌の終わり」 寺尾紗穂「香水」 豊田道倫「海の街へ」 七尾旅人「元日の横須賀」 野口順哉(空間現代)「符牒」 蓮沼執太「フェイシズ」 山本精一「二度寝の子守唄」 諭吉佳作/men「から」 ◎対談 佐藤良明×細馬宏通「言葉と音楽、そのしくみをめぐって」 【第二回ことばと新人賞】 大沼恵太「ゾロアスターの子宮」 山縣太一「体操させ、られ。してやられ」 【翻訳】 胡遷「空気銃」(濱田麻矢訳) 【本がなければ生きていけない】 東千茅「言葉に呑まれる」 百瀬文「あのページで逢いましょう」 (出版社商品ページより)